当サイトではこれまで、2つの指標の相関係数を計算する形の分析を数十本公開してきました。しかし相関係数はあくまで「2つの数字の関係」しか見せてくれません。実際の県の性格は、所得だけでも医療資源だけでも決まらず、複数の指標が絡み合って出来ています。そこで今回は、県民所得・平均年収・貯蓄額・家賃・人口密度・医師数・看護師数・平均寿命・犯罪率・交通事故死者率・森林率・持ち家率・喫茶店密度・温泉地密度・道の駅密度・伝統的工芸品密度・大学数・製造品出荷額・気温・日照時間という20の指標を同時に扱う多変量分析を行いました。
手法は主成分分析(PCA)です。20指標をすべて平均0・標準偏差1に標準化したうえで、47都道府県のばらつきを最もよく説明する軸を機械的に抽出しています。第1主成分は全体のばらつきの31.9%を説明し、県民所得・平均年収・家賃・人口密度・犯罪率が高いほどプラスに、森林率・人口あたり看護師数・持ち家率が高いほどマイナスに動きました。これは要するに「都市集積度」の軸で、そのまま「都市度指数」として指数化しダッシュボードに追加しています。
この都市度指数だけを見ると、東京都が突き抜けて高く(+10.47)、大阪府(+5.10)、神奈川県(+4.90)、愛知県(+4.31)が続きます。ここまでは、所得や人口密度のランキングを見慣れた人には驚きが少ないと思います。面白いのはここからで、第2主成分(寄与率16.8%、こちらは「ものづくり・堅実度指数」と名付けました)を掛け合わせると、都市度が近い県同士が別方向に分かれていくのです。
ものづくり・堅実度指数がプラスに動くのは、製造品出荷額・貯蓄額・持ち家率・日照時間が高い県で、三重県(+3.14)、群馬県(+2.67)、滋賀県(+2.60)、長野県(+2.58)、岐阜県(+2.55)が上位に並びます。逆にマイナス側は、人口あたり医師数・看護師数・大学数・伝統的工芸品密度が高い県で、沖縄県(-5.15)、長崎県(-3.23)、東京都(-4.25)、福岡県(-2.42)、鹿児島県(-2.10)、大阪府(-1.89)、京都府(-1.76)が並びます。地理的にはばらばらな沖縄・長崎・大阪・京都・東京が、この軸では同じグループに入るというのは、当サイトのどの記事にもなかった発見でした。
2軸をもとに47都道府県をk-means法で5つのグループに分けると、次のような構成になりました。大都市圏ベルト型(茨城県・埼玉県・千葉県・神奈川県・愛知県・大阪府)。地方中核バランス型(宮城県・栃木県・群馬県・富山県・石川県・福井県・山梨県・長野県・岐阜県・静岡県・三重県・滋賀県・京都府・兵庫県・奈良県・岡山県・広島県・山口県、計18県)。北日本・寒冷広域型(北海道・青森県・岩手県・秋田県・山形県・福島県・新潟県)。西日本・医療充実型(和歌山県・鳥取県・島根県・徳島県・香川県・愛媛県・高知県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県、計15県)。そして東京都だけが、どのグループにも属さない単独クラスタになりました。
特に近畿地方の分かれ方は象徴的です。大阪府は大都市圏ベルト型に入り、埼玉県や千葉県と同じグループになる一方、隣接する京都府は地方中核バランス型に入り、統計的には長野県や岐阜県に近いという結果になりました。行政区分としての「近畿」は一つでも、20指標が示す性格は大阪府と京都府で別方向を向いているということです。逆に、中部地方の内陸県(長野・岐阜・山梨・富山・石川・福井)は近畿の京都・奈良・兵庫と同じグループにまとまっており、東海道新幹線や北陸新幹線の沿線という地理的なまとまりよりも、「ものづくりと生活の堅実さ」という統計的な性質のほうが強く効いているように見えます。
元々、私は地方公務員として住民情報や税務のデータを扱う中で、「一つの指標だけでは実態は見えない」という感覚を何度も持ちました。人口の多い自治体が必ずしも施設が充実しているとは限らず、人口あたりで見て初めて地方都市の方が上回っていることに気づく、という経験です。今回の分析はその延長線上にあります。所得が高い・低いだけで県を語るのではなく、20の物差しを同時に当てたときに、どの県とどの県が本当に似ているのかを機械的に洗い出してみました。
この都市度指数・ものづくり指数は、他のデータセットと同じようにダッシュボード・ランキング・都道府県ページで確認できます。自分の県が「大都市圏ベルト型」なのか「地方中核バランス型」なのか、そして地理的に近い県と本当に同じグループなのか、上の散布図や各都道府県のページで確かめてみてください。