「都会のほうが稼げる」というイメージは根強くありますが、実際に人口密度ランキングと県民所得ランキングを重ねてみると、その関係は多くの人が思っているほど単純ではありません。
まず、東京都は人口密度・県民所得のどちらでも全国トップクラスに位置しており、このイメージに最も当てはまる例です。企業の本社機能が集中し、地価も高いぶん、経済活動の密度も高くなっていることが背景にあります。しかし、この関係が全国どこでも同じように成り立つわけではありません。
たとえば人口密度がそれほど高くない北陸地方(富山県・福井県)は、県民所得で見ると全国でも上位に入る年が多くあります。これは、人口密度の高さよりも、製造業を中心とした企業の集積や持ち家率・共働き率の高さといった別の要因が、所得の高さに強く影響していることを示しています。逆に、大阪府のように人口密度は全国トップクラスでも、県民所得では東京都ほど突出していない地域もあります。
この違いから読み取れるのは、県民所得は「人がどれだけ密集しているか」よりも「どんな産業がその地域に根付いているか」に大きく左右される、ということです。人口密度はあくまで人の分布を示す指標であり、経済的な豊かさを直接示すものではありません。両方のランキングを見比べることで、「人が多い=儲かる」という単純な思い込みではなく、それぞれの地域がどんな産業構造の上に成り立っているのかという、もう一段階踏み込んだ見方ができるようになります。
実際に相関係数を計算すると、人口密度と県民所得の関係はr=0.654と中程度から強めの正の相関があります。ただし、これは「人口密度が所得を生み出している」という単純な因果関係ではなく、両方とも「都市化」という共通の背景を映しているに過ぎません。当サイトの1事業所あたり製造品出荷額の記事で見たとおり、山口県・大分県のような人口密度の低い県でも、少数の大規模工場が県民所得を押し上げているケースがあり、密度の高さだけが所得を決めているわけではないことがよく分かります。また、当サイトの貯蓄現在高データでは、所得1位の東京都が貯蓄額では8位に後退する一方、人口密度がそれほど高くない愛知県が貯蓄額1位になるなど、「密集していること」と「経済的に豊かであること」は、また別の物差しだということが繰り返し確認できます。
当サイトでは人口密度と県民所得、それぞれ単独のランキングに加えて、比較ページで2つの都道府県を選んで両方の指標を並べて見ることもできます。「人口密度は低いのに所得は高い県」「人口密度は高いのに所得はそれほどでもない県」を探してみると、その地域がどんな産業で成り立っているのか、意外な発見があるかもしれません。