製造品出荷額等の総額ランキングでは、愛知県が2位以下を大きく引き離してトップに立っています。自動車産業を中心とした巨大な製造業の集積があるためで、これ自体はよく知られた事実です。ここで気になるのは、この強さが単に「人口が多いから」なのか、それとも「人口あたりで見ても本当に強い」のかという点です。
製造品出荷額等を人口で割った「1人あたり製造品出荷額」で見ると、愛知県は総額ほどの圧倒的な差ではないものの、依然として上位に位置します。一方で、三重県・静岡県・滋賀県・栃木県・山口県といった、総額では中位にとどまる県が、1人あたりで見ると上位に浮上してきます。これらの県に共通するのは、人口規模はそれほど大きくないものの、特定の大企業の工場や関連産業が集中的に立地している点です。
この結果が示しているのは、製造業の「規模」と「生産性・集約度」は必ずしも一致しないということです。総額ランキングは、その都道府県にどれだけの工業生産活動があるかという絶対量を示す一方、1人あたりのランキングは、住民1人あたりでどれだけ製造業に依存した経済構造になっているかを示しています。1人あたりの数値が高い県は、地域経済における製造業の存在感が大きく、景気変動の影響も受けやすい構造だと考えられます。
逆に、東京都・大阪府のような大都市圏は、製造品出荷額の総額では上位に入るものの、人口で割ると順位を落とします。これは、大都市の経済がサービス業や商業、金融など、製造業以外の幅広い産業によって支えられているためです。同じ「工業が盛んな地域」という括りでも、総額で見るか、1人あたりで見るかによって、まったく違う地域の顔ぶれが浮かび上がってきます。
この「1人あたり」の強さをさらに分解すると、当サイトの1事業所あたり製造品出荷額(工場の平均規模)データが手がかりになります。1人あたり出荷額で上位に来る三重県・滋賀県は、1事業所あたりの出荷額でも上位に入っており、少数の大規模工場に生産が集中する構造を持っています。特に山口県は1事業所あたり約18億円と、東京都(約1.6億円)の11倍以上にのぼり、石油化学コンビナートのような装置産業が、少ない人口・少ない事業所数で大きな出荷額を生み出していることが分かります。つまり愛知県の強さは「自動車産業の裾野の広さ(多くの関連事業所)」、山口県のような県の強さは「少数の巨大工場への集中」という、異なるメカニズムによって生まれているのです。
また、当サイトの県民所得ランキングでは愛知県は全国2位、貯蓄額ランキングでは全国1位という結果でした。製造業の集積が、県民所得・貯蓄額という別の指標にもそのまま反映されている点は、地域経済における製造業の存在感の大きさを裏付けています。一方で、所得1位の東京都が貯蓄額では8位に後退していたことを思い出すと、製造業中心の経済構造を持つ地域のほうが、家計の蓄えという面では手堅い傾向があるのかもしれません。当サイトの製造業事業所数・1事業所あたり製造品出荷額のダッシュボードとあわせて見ることで、その県の工業がどんな規模の事業所で成り立っているのかが、より具体的に見えてきます。