製造品出荷額等を製造業事業所数で割ると、1事業所あたりの平均的な出荷規模が見えてきます。この指標で全国トップに立つのは山口県で、1事業所あたり約18億円。2位は大分県(約14億円)、3位は三重県(約13億円)と続きます。一方、最下位は東京都で、1事業所あたりわずか約1.6億円。山口県との差は11倍以上にもなります。
この違いは、それぞれの県にどんな種類の製造業が立地しているかを反映しています。山口県・大分県は、瀬戸内海沿岸に石油化学コンビナートや製鉄所といった、少数の巨大工場が集積する地域です。1つの工場が扱う設備投資・生産量が桁違いに大きいため、事業所数自体は少なくても、平均出荷額は跳ね上がります。三重県・滋賀県・愛知県も、自動車関連の大規模工場が立地しており、同様の構造を持っています。
対照的に、東京都は町工場や小規模な製造事業所が数多く集積するタイプの「工業県」です。当サイトの製造業事業所数ランキングでは、東京都は事業所数そのものは全国1位(50,051事業所)ですが、その多くは印刷業や食品加工、精密機械の小規模な工房など、少人数で運営される事業所です。1つ1つの事業所の生産規模は大きくなくても、その数の多さで全体の出荷額を積み上げている、という構造の違いが、この指標に表れています。
同様に下位に位置する沖縄県・高知県・秋田県・京都府も、大規模な重化学工業の集積地ではなく、地場の伝統産業や食品加工業など、比較的小規模な事業所が中心の産業構造を持つ地域です。特に京都府は、西陣織や京友禅といった伝統工芸を含む、職人的で小規模な事業所が多いことが、平均規模を押し下げる一因になっていると考えられます。
「製造業が盛んな県」と一括りに言っても、山口県のような少数の巨大工場に依存する経済と、東京都のような多数の小規模事業所が支える経済とでは、産業構造としての性質はまったく異なります。山口県には周南地域の石油化学コンビナートや宇部・小野田地域のセメント・化学工業など、瀬戸内工業地域を代表する大規模プラントが集積しており、これが1事業所あたりの出荷額を大きく押し上げています。
興味深いのは、この指標が必ずしも当サイトの「ものづくり・堅実度指数」の高さと一致しない点です。三重県はものづくり指数でも上位(+3.14)に入る一方、1事業所あたり出荷額で2位の大分県は、ものづくり指数ではわずかにマイナス(-0.21)でした。ものづくり指数は製造品出荷額だけでなく、貯蓄額・持ち家率・日照時間など20指標を総合したものなので、「少数の巨大プラントに依存する経済」と「地域全体が堅実な暮らし向きの経済」は、似ているようで別の性質だということが、2つの指標を見比べることで分かります。大分県のように、特定の大規模工業に強く依存する経済構造は、出荷額そのものは大きくても、地域住民の暮らし向きの豊かさには必ずしも直結しないのかもしれません。
当サイトの製造品出荷額等・製造業事業所数それぞれのダッシュボードとあわせて見ることで、その県の工業がどちらのタイプに近いかが見えてきます。