「ものづくりが盛んな県」と聞いて、どこを思い浮かべるでしょうか。実は、この問いへの答えは、何を基準に測るかによって3つに割れます。工場の「数」で測れば東京都、工場が稼ぎ出す「金額の総額」で測れば愛知県、工場1つあたりの「平均規模」で測れば山口県が、それぞれ全国1位に立つのです。
【数で測る】製造業の事業所数を都道府県別に見ると、東京都が50,051事業所で全国トップです。2位の大阪府(47,442事業所)、3位の愛知県(39,379事業所)を抑えての1位ですが、これは町工場やアトリエ規模の小さな事業所も含めた「数」の話です。都市部には中小・零細規模の製造業者が数多く集積しており、必ずしも規模の大きな工場が多いことを意味しません。
【金額で測る】ところが、製造品出荷額等(工場が実際に生産して出荷した金額の総額)で見ると、様相はがらりと変わります。愛知県が42兆円と、全国の製造品出荷額(約292兆円)の14.4%を1県だけで占め、圧倒的な1位に立ちます。2位の神奈川県(17兆円)、3位の大阪府(16兆円)を大きく引き離しており、事業所数では3位だった愛知県が、金額では他を寄せ付けない存在感を見せます。自動車産業を中心とした大規模工場の集積が、この差を生んでいます。
【規模で測る】さらに、製造品出荷額を事業所数で割った「1事業所あたりの出荷額」で見ると、1位は山口県(約18.2億円)です。事業所数では下位グループの山口県ですが、石油化学コンビナートなど大規模工場が集中しているため、1つあたりの生産規模は全国トップになります。逆に、事業所数トップだった東京都は、1事業所あたりではわずか1.6億円と、全国最下位クラスにまで沈みます。東京都の「工場」は、数は多いものの、1つ1つは小規模なものが大半だということです。
同じ製造業のデータでも、「数」「総額」「1つあたりの規模」という3つの切り口で、1位の顔ぶれがまったく変わります。工場の数が多い地域が必ずしも経済規模で強いわけではなく、逆に少数精鋭の大規模工場を抱える地域が、全体の出荷額を押し上げていることもある——「ものづくり県」というひとことでは片付けられない、地域ごとの産業構造の違いが、この3つの指標を重ねることで見えてきます。