高知県を車で走ると、平地よりも山と森の景色のほうがずっと長く続きます。この体感は数字にもそのまま表れていて、都道府県別の森林率(国土面積に占める森林面積の割合)を見ると、最も高いのは高知県の83.8%です。次いで岐阜県(81.2%)、長野県(78.8%)、島根県(78.2%)、山梨県(77.9%)と、四国山地や中部・中国地方の山がちな県が上位を占めます。逆に最も低いのは大阪府の30.0%で、千葉県(30.5%)、茨城県(30.6%)が続きます。同じ日本国内でも、県土の8割以上が森林の県から、3割程度しかない県まで、50ポイント以上の開きがあることになります。
この差の背景にあるのは、単純に山がちな地形か平野が広いかという地理的条件です。高知県・岐阜県・長野県はいずれも国土の大部分を山地が占め、可住地面積(人が住める平地)が国土全体に対して小さい県です。一方、大阪府・千葉県・茨城県は、平野部が広く早くから都市化・農地開発が進んだ地域で、森林はもともと少ないか、宅地・農地への転用が進んできた土地です。森林率は「緑の豊かさ」というより、その県がどれだけ平地に恵まれているかを裏返しに示す指標だと捉えるのが実態に近いでしょう。
森林率と当サイトの1人あたり県民所得の相関係数を計算すると、r=-0.34というゆるやかな負の相関が見られました。森林率の高い県は、可住地面積が狭く、大規模な工業集積や商業施設を誘致しにくいという地理的な制約を抱えやすいため、所得面ではやや不利になりがちだと考えられます。ただしr=-0.34は「中程度」に届かない弱い相関にとどまり、森林率だけで所得水準を説明できるわけではありません。実際、森林率78.8%の長野県は、当サイトの県民所得ランキングで中位に位置しており、森林率が高いことが直接に所得の低さへつながるわけではないことがわかります。
また、森林率と面積そのものの相関はr=0.21とさらに弱く、「県土が広い=森林率が高い」という単純な関係でもありません。北海道は面積では圧倒的な全国1位ですが、森林率は70.6%と、上位の高知県・岐阜県ほどではありません。広大な平野部(石狩平野・十勝平野など)を農地として抱えていることが、面積の割に森林率を押し下げている一因です。
森林率という一見単純な指標も、地形・可住地面積・産業構造といった複数の要因が絡み合って生まれています。当サイトが20指標から算出した都市度指数でも、森林率は都市集積度を判定するマイナス方向の要因の1つとして採用しており、森林率が高い県ほど都市度指数が低くなる傾向があります。高知県は都市度指数がマイナス側の下位、大阪府は都市度指数の上位に入っており、森林率の対比とほぼ鏡合わせの関係になっていることが確認できます。当サイトの面積・人口密度のダッシュボードとあわせて見ることで、その県がどれだけ「山がちで平地が少ない」地形かどうかが、より立体的に見えてきます。