2024年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数の推計値)を都道府県別に見ると、沖縄県が1.54で全国トップ、最下位は東京都の0.96でした。東京都は都道府県の中で唯一1.0を下回っています。この2つの数字だけを見れば「沖縄は出生率が高く、東京は低い」という、よく言われる傾向どおりの結果です。ただし、この記事で注目したいのは1位と最下位そのものではなく、「差の小ささ」です。
1位の沖縄県(1.54)と最下位の東京都(0.96)の差は、約1.6倍にとどまります。これは、当サイトがこれまで扱ってきた指標の中でもかなり小さい部類に入ります。面積では北海道が香川県の44倍、生乳生産量では北海道が2位の13倍というように、多くの指標で1位と最下位に10倍以上の開きがあったのに対し、合計特殊出生率はどの都道府県も0.96〜1.54という狭いレンジに収まっているのです。子どもを産み育てるという営みは、住む場所によって大きく変わるものではなく、全国的にゆるやかに、しかし確実に低い水準へと向かっている——この「差の小ささ」自体が、少子化が特定の地域だけの問題ではなく、全国共通の現象であることを物語っています。
順位を細かく見ると、もう1つ面白い点があります。3位から5位(鳥取県・島根県・宮崎県、いずれも1.43)が同率で並んでいるのですが、この3県には地理的な共通点がほとんどありません。山陰と九州とバラバラです。出生率の上位は、沖縄県のような明確な「地域性」よりも、各県ごとの子育て支援策や住宅事情、産業構造など、複数の要因が複雑に絡み合った結果として、たまたま似た水準に落ち着いていると考えるほうが自然です。
当サイトの1人あたり県民所得データ(2022年度)と重ねて相関係数を計算すると、r=-0.42という、中程度の負の相関が見られました。所得が高い都道府県ほど、出生率が低い傾向があるということです。ただし年度がずれている点(出生率は2024年、所得は2022年度)には注意が必要で、あくまで参考値として捉えてください。それでも、東京都・神奈川県・大阪府といった所得上位かつ都市部の県が、出生率では軒並み下位に位置しているのは、住宅費や保育環境、共働き世帯の働き方など、都市部特有の子育てコストの高さを反映している可能性があります。
最下位の東京都(0.96)だけでなく、全国トップの沖縄県(1.54)自体も、人口を維持するために必要とされる水準(人口置換水準、一般に2.07程度とされる)には遠く届いていません。厚生労働省「令和6年(2024年)人口動態統計」によると、全国の合計特殊出生率は1.15で、前年の1.20からさらに低下し、過去最低を更新しました。出生数も68万6,061人と、統計を取り始めて以来初めて70万人を下回っています。「1位と最下位の差が小さい」ということは、裏を返せば「日本全国、どこに住んでいても少子化の傾向からは逃れられていない」ということでもあります。地域差の小ささの中に、全国共通の課題が透けて見える、当サイトの中でも少し異色の指標です。