前回の記事では、20指標を主成分分析(PCA)にかけて47都道府県を5つのタイプに分類しました。今回はその続きとして、「自分の県に統計的に一番近い県はどこか」を具体的に計算してみます。使うのは、前回ダッシュボードに追加した都市度指数(横軸)とものづくり・堅実度指数(縦軸)の2つです。この2軸上で47都道府県それぞれの座標を求め、自分の県から最も距離が近い県(最近傍)を1つずつ割り出しました。
分かりやすいところから見ていきます。埼玉県に最も近いのは千葉県(距離0.62)、栃木県に最も近いのは茨城県(距離0.75)、群馬県に最も近いのは岐阜県(距離0.22)でした。埼玉・千葉は隣接県同士なので納得感がありますが、群馬県と岐阜県は隣り合っておらず、新幹線や高速道路で直接つながっているわけでもありません。それでも「製造業が強く、貯蓄・持ち家率が高い」という性質がよく似ているため、この2軸上では隣県以上に近い距離になっています。
もっとも象徴的なのは東京都です。東京都に統計的に最も近い県は大阪府ですが、その距離は5.87とすべての都道府県ペアの中で突出して大きく、2位の県(神奈川県2.37、沖縄県2.49)にも大きく水をあけています。つまり「東京都に一番近いのは大阪府」という事実は正しいものの、その大阪府ですら東京都とはかなり離れている、というのが正確な言い方になります。前回の記事で東京都を「単独クラスタ」と呼んだのは、この数字の裏付けがあります。
地理的な近さと統計的な近さがねじれる例も見られます。京都府に最も近いのは福岡県(距離1.06)、大阪府に最も近いのは神奈川県(距離2.37)でした。近畿地方の中で最も似ているのはお互いではなく、京都府は九州の福岡県、大阪府は関東の神奈川県という、地理的にはかなり離れた県が最近傍になっています。
一方で、この最近傍探しには限界もあります。北海道に最も近いのは熊本県(距離0.41)という結果が出ましたが、気候や積雪量を考えれば体感的にはまったく似ていない組み合わせです。これは、都市度指数とものづくり指数の2軸だけでは全体のばらつきの48.7%しか説明できておらず、気温や日照時間の違いといった残り半分の情報がこの2軸には反映されていないためです。統計的に近いというのは「この2つの物差しで測る限りは近い」という意味であり、あらゆる面で似ているという意味ではない、という点は割り引いて読む必要があります。
実際に自分の県と「統計的な双子」を見つけたら、当サイトの比較ページでその2県を直接見比べてみることをおすすめします。所得・医療・治安・文化など、個別の指標ではどこが似ていてどこが違うのかまで具体的に分かります。引っ越しや転勤で次の住まいを探すときに、地理的な近さだけでなく「暮らしの性質が近い県」という切り口を1つ加えてみると、候補の見え方が変わるかもしれません。下の表から、47都道府県すべての組み合わせを確認できます。