環境省が公表する令和4年度の温泉利用状況(令和5年3月末現在)によると、都道府県別の温泉地数(宿泊施設のある温泉地の数)で全国トップに立つのは北海道の230か所です。2位は長野県(194か所)、3位は新潟県(142か所)、4位は福島県(127か所)、5位は青森県(125か所)と続きます。全国の温泉地数は合計2,879か所です。
ところが、同じ環境省の調査で「源泉総数」を見ると、1位は北海道ではなく大分県(5,090本、全体の18.2%)です。2位は鹿児島県(2,738本)、3位が北海道(2,229本)となります。さらに「高温源泉数(42℃以上)」でも大分県が1位(3,877本)、「総湧出量」でも大分県が1位(毎分295,708リットル)と、大分県は「地域の広がり(温泉地の数)」では上位止まりながら、「地中から湧き出す温泉そのものの規模」では他県を圧倒しています。
この違いは、温泉地の成り立ちの違いを表しています。北海道は広大な面積の中に、道内各地の観光地や温泉町として温泉地が数多く点在している一方、大分県は別府温泉・由布院温泉といった一部のエリアに、極めて密度の高い源泉が集中しているのです。最も温泉地が少ないのは沖縄県(13か所)で、鳥取県(15か所)、大阪府(17か所)が続きます。「温泉地が多い県」と「源泉が豊富な県」は、それぞれ別の県が1位になる——同じ「温泉」というテーマでも、何を数えるかによって答えが変わる好例です。
九州・沖縄8県を合計しても温泉地数は345か所で、全国2,879か所のうち約12%にとどまります。大分県は源泉の規模では圧倒的な全国1位でありながら、単純な温泉地の「数」で見れば九州の中でも鹿児島県(87か所)に次ぐ2位止まりです。県内の一部エリアに超高密度で源泉が集中している大分県のような県がある一方で、九州全体としては北海道・長野県・新潟県が並ぶ東日本の温泉地の多さには及ばない——「地域の代表的な1県」の数字と「その地域ブロック全体」の数字は、必ずしも同じ方向を向くとは限りません。
さらにもう一つ、面積あたりの密度で見ると、また違う顔ぶれが上位に来ます。1,000km²あたりの温泉地数を計算すると、1位は神奈川県(16.6か所)、2位は千葉県(16.1か所)、3位は富山県(15.5か所)と、いずれも面積が全国的に見て小さめの県が並びます。温泉地の絶対数では上位に入らない神奈川県・千葉県が、密度で見れば北海道(2.8か所)を大きく上回るということです。北海道は「絶対数の王者」、大分県は「源泉の規模の王者」、神奈川県・千葉県は「密度の王者」と、同じ温泉地データからでも、何を基準に並べるかによって全く違う1位が生まれます。
都道府県のランキングを見るときは、その数字が「総量」なのか「密度」なのか「規模・強度」なのかを意識すると、より正確に実態をとらえられます。ちなみに温泉地数が最も少ないのは沖縄県(13か所)、鳥取県(15か所)、大阪府(17か所)ですが、沖縄県は温泉地こそ少ないものの海洋性のリゾート観光で、大阪府は都市型の商業観光で、それぞれ別の形の観光資源を強みにしている県です。温泉地の少なさが、そのまま観光の弱さを意味するわけではありません。当サイトの温泉地・面積のダッシュボードから、自分の県が3つの基準それぞれで何位に入るか確認してみてください。