日本で作られている生乳の、実に半分以上がたった1つの道から生まれています。都道府県別の生乳生産量を見ると、北海道が387.6万トンで、他の都道府県を寄せ付けない圧倒的な全国トップです。全国47都道府県の生産量合計747.4万トンのうち、北海道1道だけで約52%を占めており、日本の生乳の半分以上がこの1つの道で作られていることになります。2位は栃木県(29.9万トン)、3位は群馬県(24.7万トン)ですが、北海道との差は13倍以上にのぼり、当サイトでこれまで見てきたどの指標よりも、1つの地域への集中度が際立っています。
この極端な集中は、当サイトの米収穫量ランキングとは対照的なパターンです。米収穫量は新潟県・北海道・秋田県・山形県・岩手県といった複数の県にわたって上位が分散していましたが、生乳生産は北海道という単一の地域に生産基盤が集約されています。背景には、酪農に適した広大で冷涼な土地(十勝平野・根釧台地など)が北海道に集中している地理的条件と、大規模な牧草地を必要とする酪農経営が、可住地面積が限られる本州以南では大規模化しにくいという構造的な事情があります。
2位以下に目を向けると、栃木県・群馬県・千葉県・熊本県・岩手県・愛知県・茨城県と、関東北部・九州・東北の県が続きます。これらの県は、北海道ほどの規模ではないものの、大消費地である首都圏・中京圏・九州の都市部に生乳を安定供給できる地理的な近さを活かした「大消費地近郊型」の酪農地帯だと位置づけられます。北海道の生乳は輸送コストの関係でチーズやバターなど加工品向けの比率が高い一方、関東・九州の酪農地帯は、鮮度が重要な飲用牛乳向けの供給拠点としての役割を担っている、という構造の違いがあります。
生乳生産量のように、1つの地域が全国シェアの過半を占めるほど集中した指標は、当サイトで扱ってきたデータの中でも珍しい部類に入ります。人口や所得のように緩やかな都市集中を示す指標とは違い、気候・土地条件という、人為的に動かしにくい制約が生産地をほぼ一意に決めてしまう構造が、この極端な偏りの背景にあります。
当サイトの米収穫量・面積のダッシュボードとあわせて見ると、北海道が持つ広大な農地面積が、米作と酪農という2つのまったく異なる農業を同時に高い水準で支えていることがわかります。同じ「農業県」という括りでも、その中身は品目によって大きく異なる、という点も興味深い発見です。