以前の記事で、生乳生産量の51.9%を北海道が占めているという極端な地域集中を紹介しました。この生乳生産量と都道府県の面積の相関係数を計算すると、r=0.964という、当サイトがこれまで扱ってきた指標の中でも最高水準の強い相関になります。道の駅の数と面積の相関(r=0.90)や温泉地の数と面積の相関(r=0.71)よりもさらに強く、一見すると「面積が広い県ほど生乳生産量が多い」という、非常にきれいな関係に見えます。
しかし、この数字をそのまま受け取るのは早計です。以前の森林率と犯罪発生件数の記事で行ったのと同じように、影響力の大きい1点を除いて計算し直してみます。北海道を除いた46都道府県だけで相関係数を計算すると、r=0.311まで下がりました。全国47都道府県で見たときのr=0.964という数字は、そのほとんどが北海道という単独の県によって作られていたということです。
実際、面積で2位の岩手県(15,275km²)の生乳生産量は209千トンで全国6位、面積で4位の長野県(13,562km²)は112千トンで全国10位にとどまります。一方、面積では20位の栃木県(6,408km²)が生乳生産量では全国2位(299千トン)につけており、面積の順位と生乳生産量の順位は、北海道を除くとかなり入り組んでいます。「面積が広いから生乳が多い」という説明は、北海道1県には強く当てはまるものの、残り46都道府県にはそれほど当てはまりません。
これは、相関係数という統計量が持つ弱点を象徴する例です。47都道府県という少ないサンプル数の中に、他を大きく引き離す極端な値(外れ値)が1つでも含まれていると、相関係数はその1点に強く引っ張られます。当サイトで相関係数を紹介する記事では、できるだけ突出した値を除いた場合の再計算もあわせて示すようにしていますが、今回のケースはその必要性がとりわけ高い例だといえます。r=0.96という数字だけを見て「面積が生乳生産量を決めている」と結論づけるのではなく、「北海道という特殊な酪農適地が全体の数字を押し上げている」という、より正確な理解にたどり着くことができました。