図書館の数だけで、その県の「文化的な豊かさ」を語れるでしょうか。都道府県別の公共図書館数を見ると、東京都が394館で圧倒的なトップに立ち、次いで埼玉県・大阪府・北海道・千葉県と続きます。単純な数の比較であれば、東京都は文化的インフラが最も充実した都道府県だと言いたくなります。しかし、これまで当サイトが病院数や文化財数で繰り返し確認してきたのと同じ落とし穴が、ここにもあります。
まず、東京都は人口も圧倒的に多いため、館数が多いのは半ば当然の結果です。人口10万人あたりに換算すると、実は東京都は上位から後退し、代わりに長野県や山梨県、鳥取県のような、人口規模の割に図書館が手厚く整備されている地方の県が上位に浮かび上がってきます。特に長野県は総数でも全国6位に入っており、人口規模を考えると図書館密度は際立って高い水準にあります。これは、長野県が「教育県」としての歴史的な自負を持ち、市町村単位で図書館整備に力を入れてきた経緯とも関係していると考えられます。
次に注意したいのは、「図書館数」と「図書館へのアクセスのしやすさ」は必ずしも一致しないという点です。東京都のように人口密度が非常に高い地域では、1つの図書館が担うカバーエリアはコンパクトで、多くの住民が徒歩や自転車で通える範囲に図書館があります。一方、面積の広い北海道や岩手県のような地域では、館数自体は多くても、1館あたりがカバーする面積が広大になり、住民によっては最寄りの図書館まで車で30分以上かかることも珍しくありません。つまり「館数の多さ」は、都市部では密度の高さを、地方では面積の広さをカバーするための数、という異なる意味合いを持っている可能性があります。
さらに、図書館数という指標自体が、蔵書数・開館時間・電子書籍サービスの有無といった「質」の違いをまったく反映していない点にも注意が必要です。小規模な分館を多数抱える自治体と、大規模な中央図書館1館に機能を集約する自治体とでは、同じ「1館」という単位でもサービスの厚みはまったく異なります。実際、都道府県立図書館クラスの蔵書数だけで見ると、館数ランキングとは異なる顔ぶれが上位に来ることも知られています。
当サイトの人口10万人あたり病院数や国宝・重要文化財数のダッシュボードと同じように、図書館数についても今後、人口や面積で調整した指標を追加していく予定です。単純な総数だけでなく、複数の切り口を重ねて見ることで、その地域の文化的インフラの実像に近づくことができます。