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図書館数と大学数の相関係数は0.925。しかし人口を調整すると、ほぼゼロになる

当サイトが持つ複数の統計データについて、47都道府県を単位にピアソンの相関係数を計算してみると、いくつか目を引く数字が出てきます。その中でも特に強いのが、図書館数と大学数の相関です。単純な件数同士で相関係数を求めると r = 0.925 という、非常に強い正の相関になります。感覚的には「図書館が多い県は大学も多い」という関係が成り立っているように見えます。

ところが、この2つの指標にはそれぞれ、人口との相関係数を計算すると、人口と図書館数で r = 0.875、人口と大学数で r = 0.904 という、これまた非常に強い相関が出てきます。つまり、図書館数も大学数も、それぞれ独立に「人口が多い都道府県ほど数が多い」という共通の傾向を持っているのです。これは考えてみれば当然で、人口の多い都道府県ほど、図書館を必要とする住民の数も、大学に通う若者の数も多くなります。

ここで統計学の基本的な注意点が関わってきます。AとBという2つの変数の間に強い相関があっても、それが「Aが直接Bの原因になっている」ことを意味するとは限りません。AとBの両方に影響を与える、共通の第三の変数(交絡変数)が存在する場合、AとBは実際には因果関係がなくても、見かけ上は強く連動して見えてしまいます。今回のケースでは、「都道府県の人口規模」がまさにこの交絡変数にあたります。

この仮説を検証するために、図書館数・大学数の両方を人口10万人あたりの値に変換してから、あらためて相関係数を計算し直してみました。結果は r = -0.009 と、ほぼ完全にゼロに近い値になりました。つまり、人口という共通の要因を取り除いてしまうと、図書館の多さと大学の多さの間には、統計的にはほとんど何の関係も見られなくなるのです。図書館数と大学数の「強い相関」は、実体のある関係ではなく、両者が人口規模という同じ変数に連動して動いていたことで生まれた、見かけ上の相関(疑似相関)だったと考えられます。

このことは、都道府県データを分析するうえで重要な教訓を示しています。件数の絶対値同士で相関係数を計算すると、多くの指標が「人口の多さ」という共通の交絡変数を通じて、実体のない強い相関を示してしまう可能性があります。当サイトが人口10万人あたり・面積あたりといった調整済みの指標を数多く用意しているのは、こうした見かけ上の相関に惑わされず、指標同士の本当の関係性を見極めるためでもあります。

ちなみに、n=47というサンプルサイズは統計的にそれほど大きくないため、外れ値(例えば東京都のような突出したデータ)1つが相関係数を大きく動かしてしまう点にも注意が必要です。ただし今回のケースでは、東京都を除いて件数同士の相関係数を計算し直しても r = 0.780 と、依然として強い相関が残りました。つまり、この見かけ上の相関は東京都という1点だけが作り出したものではなく、47都道府県全体を通じて「人口が多いほど図書館も大学も多い」という傾向が広く存在していることを意味します。外れ値の除外と、交絡変数の調整(人口あたりへの変換)は、似ているようで実は別の作業であり、今回のように後者でしかスプリアス(見かけ上の)関係を解消できないケースがあるという点も、あわせて覚えておきたいポイントです。当サイトの生乳生産量の記事では逆のパターン、つまり北海道という1県を除くだけで相関係数がr=0.96からr=0.31まで崩れるケースを紹介しています。同じ「外れ値の影響」でも、除外だけで解消するケースと、根本的な変数変換が必要なケースがあるということです。

図書館数 × 大学数(都道府県別散布図)

相関係数 r = 0.925強い相関、n=47)。点1つが1つの都道府県を表しています。 右上に飛び出している1点が東京都です。この1点が相関係数を大きく押し上げています。