単純な病院数は、人口規模に比例して増える性質があります。つまり、地域医療の充実度を測るには、人口で調整した指標のほうが実態に近いはずです。そこで実際に計算したのが、「人口10万人あたり病院数」というランキングです。
単純な病院数ランキングでは、東京都・大阪府・北海道・福岡県といった人口の多い都道府県が上位を占めます。ところが、人口10万人あたりに調整し直すと、これらの大都市圏の多くは中位から下位に沈み、代わりに高知県や鹿児島県、徳島県といった、人口はそれほど多くないものの病院数が相対的に多い県が上位に浮上します。人口が集中する大都市は、1つの大きな病院に患者が集約される傾向がある一方、人口密度が低い地方では、地域ごとに小規模な病院が分散して立地せざるを得ない事情があることが背景にあると考えられます。
この結果は「地方は医療が手薄で、都市は医療が充実している」という単純なイメージに、一つの反例を示しています。もちろん、病院数が多いことがそのまま医療の質の高さや利便性を意味するわけではありません。大都市の病院は高度医療に対応した大規模な施設が多く、地方は日常的な診療を担う中小規模の病院が数として多い、という施設の性格の違いも影響しています。単純な数の比較だけでなく、病床数や医師数、専門医療への対応状況なども合わせて見ることで、より実態に近い医療体制の姿が見えてきます。
興味深いのは、この上位入れ替えのパターンが、当サイトの看護師数データとも重なる部分がある点です。人口10万人あたり看護師数では高知県が全国トップ(1,114.78人)、鹿児島県・熊本県も上位に入っており、病院数を人口で調整したときに浮上する県と、かなり重なりが見られます。一方で、当サイトの人口10万人あたり医師数では、上位が徳島県・東京都・京都府という「西高東低」の別のパターンを示しており、必ずしも病院数の調整結果とは一致しません。同じ「医療が手厚い」という括りでも、病院という施設の数、医師の密度、看護師の密度は、それぞれ独立した分布を持っているということです。
当サイトでは、単純な病院数ランキングと、人口で調整したこのランキングの両方を掲載しています。同じ「病院数」というデータでも、どう計算するかによって見える景色がまったく変わるという一例として、両方を見比べてみてください。あわせて医師数・看護師数のダッシュボードも見ると、その地域の医療提供体制がどんな要素で成り立っているのか、より多角的に理解できます。