「離婚率が高い県」と聞いて、どこを思い浮かべるでしょうか。厚生労働省「人口動態統計」(2023年)によると、離婚率(人口千人あたりの離婚件数)が最も高いのは沖縄県(2.20)で、2位は宮崎県(1.74)、3位は大阪府・北海道(ともに1.71)、5位は福岡県(1.70)と続きます。逆に最も低いのは富山県(1.14)で、新潟県(1.19)、山形県(1.20)、石川県(1.24)、島根県(1.25)が下位に並び、北陸地方が全国的に低い水準で安定していることが分かります。1位の沖縄県と最下位の富山県では、約1.9倍の差があります。
よく指摘される要因のひとつが、三世代同居率や持ち家率の違いです。実際に、当サイトの持ち家比率データと重ねて相関係数を計算すると、r=-0.692というはっきりした負の相関が見つかりました。持ち家比率1位の秋田県(77.3%)は離婚率1.27と下位グループに入り、持ち家比率2位の富山県(76.8%)は離婚率が全国最下位です。北陸地方は共働き率が高い一方で、祖父母と同居する世帯や持ち家に住む世帯の割合も高く、家族のサポート体制や住居の安定が、結婚生活を続けるうえでの物理的・心理的なクッションになっているという見方と、データの傾向はおおむね一致しています。
ただし、この関係だけで全てを説明できるわけではありません。持ち家比率が全国最下位(45.0%)の東京都は、離婚率で見ると1.49と、47都道府県のちょうど中位に位置しています。持ち家比率が低いからといって、必ずしも離婚率が高くなるとは限らないということです。東京都のように人口が多く単身世帯も多い大都市は、持ち家比率と離婚率の関係から外れる例外になりやすいようです。
もう1つの要因として、婚姻率そのものの高さも関係しています。離婚率は「結婚している人の中でどれだけ離婚するか」ではなく「人口全体に対する離婚件数」で計算されるため、そもそも婚姻件数(結婚する人)が多い地域では、離婚件数も比例して増えやすい構造があります。沖縄県は全国的に婚姻率・出生率がともに高い地域としても知られており、離婚率の高さだけを取り出して「家族の絆が弱い地域」と結びつけるのは早計です。
経済的な要因を指摘する見方もあります。離婚率が上位の沖縄県・宮崎県は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2024年)で見た都道府県別賃金がそれぞれ44位・47位と、全国的に低い水準にあります。一方で、離婚率3位の大阪府・5位の福岡県は、賃金そのものは全国平均を上回っており、経済的な余裕のなさだけでは説明できません。都市部では、共働きで夫婦それぞれが経済的に自立しやすいことが、逆に離婚のハードルを下げているという見方もあります。低所得による生活の不安定さと、都市部での経済的自立のしやすさという、方向の異なる2つの経済的要因が、それぞれ別の形で離婚率を押し上げている可能性があります。
また、離婚率は景気動向とも連動する傾向が知られています。全国の婚姻件数は1972年の109万9,984組をピークに減少を続け、2023年には47万4,717組まで落ち込みました。婚姻率(人口千対)もピーク時の12.0から2023年には3.9まで低下しています。離婚件数・離婚率がともに緩やかな減少傾向にあるのは、離婚そのものが減ったというより、そもそも結婚する人自体が減っている(婚姻率の低下)ことが背景にあるとする見方が有力です。年ごとの推移をあわせて見ることで、単年のランキングだけでは見えない「増えているのか、減っているのか」という流れがつかめます。
当サイトの離婚率ダッシュボードでは、都道府県ごとの推移を確認できます。自分の住む地域の数字が、全国的な傾向と同じ方向に動いているのか、逆行しているのかを見てみると、ニュースで語られる「少子化」「未婚化」といった話が、身近な地域でどう表れているかが具体的に見えてくるはずです。