国宝・重要文化財の総数ランキングでは、東京都・京都府・奈良県・滋賀県が上位を占めます。この総数を人口で割って「人口10万人あたり」の指標に直すと、ランキングの顔ぶれは大きく変わります。
総数で1位だった東京都は、人口10万人あたりで見ると上位から大きく後退します。理由は単純で、東京都は人口が非常に多いため、文化財の総数が多くても、1人あたりに換算すると相対的に薄まってしまうためです。逆に、総数では3位・4位だった奈良県・滋賀県は、人口10万人あたりで見ると全国トップクラスに躍り出ます。人口が少ないにもかかわらず文化財の蓄積が多いため、1人あたりの密度が非常に高くなるからです。
この結果が示しているのは、「文化財がどれだけ集積しているか」という絶対量と、「その土地に住む人にとって文化財がどれだけ身近にあるか」という密度は、まったく別の問いだということです。総数ランキングは観光資源としての規模感をつかむのに向いていますが、人口あたりのランキングは、地域住民にとって歴史的な建造物や美術品がどれだけ生活圏に密着しているかを表しています。
同じような逆転現象は、当サイトの他の指標でも見られます。人口10万人あたり病院数のランキングでも、単純な病院数では大都市が上位を占める一方、人口で調整すると地方の県が上位に来る、という似た構造がありました。総数を人口で割るという操作は、単純な指標ではなく「規模の違いを取り除いた、もう一つの実態」を見せてくれる、当サイトが繰り返し使っている分析の型です。
この「総数では東京都、人口あたりでは別の県」というパターンは、実は当サイトの複数のデータで繰り返し現れています。大学数では総数トップの東京都(139校)に代わって京都府が人口あたり1位に立ち、喫茶店の軒数でも総数トップの東京都に代わって長野県が人口あたり1位になります。これらに共通するのは、東京都が「絶対量として何でも多い」一方で、人口自体も突出して多いため、1人あたりの数値では他の指標に譲ってしまう、という構造です。逆に奈良県・滋賀県・京都府・長野県のように、特定の文化・産業が人口規模の割に色濃く根付いている県が、人口あたりの指標で存在感を発揮するというのが、当サイトの二次分析全体を通じて見えてくる大きなパターンです。
総数ランキングと人口あたりランキング、どちらが「正しい」というものではありません。何を知りたいかによって、見るべきランキングは変わります。両方のダッシュボードを見比べて、自分の関心に近いのはどちらの見方か、確かめてみてください。