国宝・重要文化財の総数ランキングでは、東京都が2,729件で1位でした。ただしこれは、性質の異なる2種類の文化財を合算した数字です。文化庁はこの総数を「建造物」と「美術工芸品(絵画・彫刻・工芸品など)」に分けて公表しており、建造物だけに絞ってランキングを作り直すと、まったく違う顔ぶれが上位に来ます。
建造物数で1位に立つのは京都府(292件)、2位は奈良県(261件)、3位は滋賀県(182件)です。東京都は9位(72件)にとどまり、総数ランキングでの1位という座から大きく後退します。これは、東京都の文化財の多くが「美術工芸品」(絵画・書跡・刀剣など、博物館に収蔵される移動可能な文化財)に偏っているためです。実際、美術工芸品だけのランキングでは東京都が1,562件で圧倒的な1位を維持しています。
つまり、国宝・重要文化財という同じ枠組みの中にも、「その土地に建っている建造物」と「どこかに収蔵されている美術工芸品」という、性質のまったく異なる2つのカテゴリが混在しているということです。総数だけを見ていると、この違いが埋もれてしまいます。建造物は移動できないため、その数は「その土地に、どれだけ古い寺社仏閣や城郭が現存しているか」を直接反映します。一方、美術工芸品は歴史的な経緯によって特定の博物館・美術館に集約されることがあり、必ずしも「その土地で生まれた文化財」とは限りません。
建造物ランキングの上位を占める京都府・奈良県・滋賀県は、いずれも古代から中世にかけて政治・宗教の中心地であった地域で、寺院や神社がそのままの姿で数多く現存しています。特に滋賀県は総数ランキングでは4位でしたが、建造物数では3位に浮上しており、比叡山延暦寺をはじめとする古刹が多く残る地域であることが、この数字に表れています。
文化財を観光や地域理解の切り口として使う場合、「総数」よりも「建造物数」のほうが、実際に現地を訪れて目にできる歴史的景観の豊かさに近い指標だといえます。当サイトの国宝・重要文化財数(総数)、人口10万人あたり、面積あたりのランキングとあわせて、この建造物数ランキングも参考にしてみてください。