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大学が多い県は本当に稼げるのか?答えは『ほぼ無関係』だった

「大学が多い地域は、優秀な人材や研究機関が集まり、経済的にも豊かになりやすいのではないか」という仮説は、直感的にはもっともらしく聞こえます。実際に確かめてみましょう。当サイトの人口10万人あたり大学数と県民所得の相関係数を計算すると、r = 0.182 という、ほとんど関係がないと言っていいレベルの弱い正の相関にとどまりました。

人口あたり大学数のランキングでは京都府がトップ、続いて石川県東京都岡山県山梨県が上位に並びます。この中で県民所得も上位に来るのは東京都だけで、京都府石川県岡山県山梨県は、県民所得ランキングでは中位から中の上程度にとどまります。「学生の街」であることと「稼げる街」であることは、別の物差しだということが、この数字からはっきり分かります。

この結果は、当サイトの1事業所あたり製造品出荷額の記事とあわせて考えると理解しやすくなります。県民所得を大きく押し上げているのは、大学の集積ではなく、山口県大分県三重県のような、少数の大規模工場や特定の産業クラスターの存在でした。大学は教育・研究の拠点として地域に多くの若者を集める効果はあっても、それが直接的に地域の生産額や所得を押し上げるわけではないようです。総務省「住民基本台帳人口移動報告」(2023年)によると、東京圏(東京都埼玉県千葉県神奈川県)への日本人の転入超過数は11万4,802人で、そのうち20〜24歳の年齢層だけで8万821人と、実に全体の7割を占めています。大学を出た学生の多くが、卒業後に別の地域(多くの場合は東京や大阪などの大都市圏の企業)に就職してしまう「頭脳流出」の構造が、大学数と所得の無相関を裏付ける形で、データにはっきりと表れています。

もちろん、大学の存在は、地域に学生という若い消費者層をもたらし、飲食店や住宅需要、当サイトの喫茶店の軒数のようなデータにも間接的な影響を与えている可能性があります。大学の経済効果は、県民所得という大きな数字にはあまり表れず、もっと小さな、地域に根ざした消費活動の中に現れているのかもしれません。「大学が多い=豊かな県」という単純な図式は、少なくとも都道府県単位のデータからは裏付けられませんでした。

進学の段階でも、同じような一極集中の構造が見られます。内閣府の分析(2024年)によると、大学進学時の都道府県別流出入者数は東京都が突出して多く、2024年で約7万8,000人の純流入となっています。他に純流入となっているのは、宮城県愛知県京都府大阪府広島県福岡県といった、各地域の中心的な都市を抱える府県に限られます。京都府が人口あたり大学数で全国トップでありながら県民所得では中位にとどまるのは、進学のタイミングで全国から学生を集めても、卒業後の就職先としては東京・大阪など他の大都市圏に流出してしまう構造が背景にあると考えられます。

人口10万人あたり大学数 × 県民所得(都道府県別散布図)

相関係数 r = 0.213弱い相関、n=47)。点1つが1つの都道府県を表しています。 点がほぼ横一直線に広がっており、大学数(人口あたり)の多さと県民所得の高さの間に、右肩上がりの明確な関係は見られません。