「医師の数が多い県ほど長生きできる」——そう思うかもしれませんが、実際のデータを見るとそう単純ではありません。都道府県別の平均寿命(男性)を見ると、滋賀県が82.73歳で全国トップ、次いで長野県・奈良県・京都府と続きます。最下位は青森県で79.27歳。トップの滋賀県との差は3.46歳にのぼります。当サイトの平均寿命(女性)ランキングでも、上位に岡山県・京都府・島根県、下位に青森県が来るという、男女である程度共通した地域差が見られます(男女の平均寿命の相関係数は r = 0.812 と非常に強い連動です)。
この平均寿命の地域差を見ると、「医療が充実している地域ほど長生きできるのだろう」と考えたくなります。しかし、当サイトの人口10万人あたり医師数データとの相関係数を計算すると、r = 0.130 とほとんど連動していないという結果になりました。医師数が全国トップクラスの徳島県・東京都・京都府のうち、平均寿命でも上位に来るのは京都府だけで、徳島県は平均寿命で見ると中位、東京都も上位ではあるものの突出してはいません。逆に、医師数が最下位クラスの埼玉県・茨城県・千葉県は、平均寿命でも下位寄りではあるものの、最下位の青森県(医師数は北海道と同程度の中位)ほど極端ではありません。
同様に、県民所得との相関係数も r = 0.240、持ち家比率との相関係数は r = 0.040 と、いずれも弱い、あるいはほとんど無い相関にとどまりました。「豊かな地域ほど長生きできる」「安定した住環境が長寿につながる」という、もっともらしく聞こえる仮説の多くが、47都道府県という単位で見る限り、強い裏付けを持たないという結果です。
平均寿命の地域差の要因については、滋賀県が公表している長寿要因分析で、具体的な数字が示されています。滋賀県の成人男性の喫煙率は全国最下位(最も低い水準)で、1日あたりの食塩摂取量も下から4番目の少なさです。厚生労働省の人口動態統計特殊報告(年齢調整済み)によれば、滋賀県は脳血管疾患による死亡率が全国で最も低く、がんによる死亡率も全国で2番目に低い水準にあります。対照的に、平均寿命最下位の青森県は、食塩摂取量が男性で全国2位・女性で5位と高く、インスタントラーメンの購入量が全国1位であるなど、塩分の多い食生活が課題として指摘されています。つまり平均寿命は、医療機関への物理的なアクセスのしやすさよりも、喫煙率・塩分摂取量といった日々の生活習慣によって、より強く左右されている可能性が高いということです。
医療インフラの充実度と寿命の長さが単純には結びつかないという事実は、当サイトの総合力スコアが医療アクセス(人口10万人あたり病院数)を評価軸の1つに使っていることの限界も示しています。医療体制の充実は、それ自体として重要な指標である一方、住民の健康や寿命を直接保証するものではない、という前提を持って数字を読むことが大切です。