データみっけ

Articles

県民所得が高いほど長生きできるとは限らない。所得と平均寿命の相関はr=0.24にとどまる

「所得が高い地域ほど医療や食生活に恵まれ、長生きできるのではないか」というのは、直感的には自然な仮説です。しかし県民所得と平均寿命(男性)の相関係数を計算すると、r=0.24という弱い値にとどまりました。以前の記事で紹介した「医師数が多いほど長生きできるわけではない」という結果とあわせて、平均寿命は所得の多寡だけでは説明しにくい指標だということが、重ねて確認できた形です。厚生労働省「令和2年都道府県別生命表」でも、平均寿命の地域差の要因として、がん・心疾患・脳血管疾患といった三大死因の罹患率の違いが大きいことが指摘されており、これらは所得よりも生活習慣や地域の予防医療の取り組みに強く左右されます。

平均寿命(男性)の上位を見ると、1位滋賀県(82.73歳)、2位長野県(82.68歳)、3位奈良県(82.40歳)と続きますが、このうち県民所得で上位に入るのは滋賀県だけです。奈良県は県民所得では39位という下位グループに沈んでいます。当サイトの別記事で紹介した通り、奈良県は大阪・京都への通勤者が多く、県民所得が実態より低く出やすい県ですが、それを踏まえても「所得の順位と平均寿命の順位が大きくねじれる県」の代表格と言えます。

一方、県民所得1位の東京都(521.4万円)の平均寿命は81.77歳で、全国順位では10位にも入りません。県民所得2位の愛知県も81.77歳と東京都と同水準で、所得の高さがそのまま平均寿命の高さに直結しているわけではないことが分かります。逆に、平均寿命が最も短いのは青森県(79.27歳)で、県民所得は中位(263.3万円)に位置しており、所得の低さだけで説明できる差でもなさそうです。

平均寿命は、所得よりもむしろ、食生活・喫煙率・気候・地域の医療体制へのアクセスのしやすさなど、複数の要因が絡み合って決まると考えられています。2位の長野県の事例は、この点をよく物語っています。長野県はかつて脳血管疾患による死亡率が全国でも高い水準にあり、昭和20年代から地域住民による「保健補導員」制度を整え、減塩運動や食生活改善に長年取り組んできました。現在も人口10万人あたり保健師数は全国1位(76.6人、全国平均40.4人の約1.9倍)で、専門職による地域の保健活動の厚みが、所得水準とは別の形で平均寿命を押し上げてきたと考えられています。今回の分析は「県民所得と平均寿命の間に強い相関がある」という仮説を裏付けるものではなく、むしろ弱いという結果でした。相関が弱いという結果もまた、1つの発見です。所得ランキング・平均寿命ランキングのどちらか一方だけで、その県の暮らしやすさを判断するのは早計だと言えそうです。

県民所得 × 平均寿命(男性)(都道府県別散布図)

相関係数 r = 0.240弱い相関、n=47)。点1つが1つの都道府県を表しています。 点が右肩上がりの帯にほとんど収まらず、ばらついていることが分かります。所得が高くても平均寿命が長いとは限らず、その逆もまた同じです。