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家賃は「所得」と「人口密度」でほぼ決まる。それでも説明できない割高・割安な県はどこか

以前の記事で、家賃と人口密度の相関係数がr=0.861、家賃と年収の相関係数がr=0.705と、それぞれ強い相関を持つことを紹介しました。ただし相関係数は2つの指標を1組ずつしか見ておらず、「所得と密度、両方を同時に考慮したら家賃はどこまで説明できるのか」には答えていません。そこで今回は重回帰分析という手法を使い、県民所得(1人あたり、千円)と人口密度(人/km²、対数変換)の2つから家賃(1坪・1か月あたり、円)を予測する式を作り、その式では説明しきれない県を探してみます。

結果として、この2指標だけで家賃のばらつきの69.2%を説明できました。所得が高いほど、そして人口密度が高いほど家賃も高くなるという、直感通りの関係が数式でも裏付けられた形です。ただし逆に言えば、残りの30.8%は所得でも密度でも説明がつかない部分ということになります。この「予測と実際の差」を残差と呼び、残差がプラスに大きい県ほど「所得・密度から予想されるより家賃が高い」、マイナスに大きい県ほど「予想されるより家賃が安い」ことを意味します。

残差がマイナス側、つまり「家賃コスパが良い」上位には、群馬県香川県愛知県福井県三重県が並びました。特に愛知県は、県民所得が全国トップクラスでありながら家賃は予測値より800円以上安く、以前の記事で紹介した「貯蓄額で東京都を上回る」という結果とも整合的です。所得が高いのに家賃だけが相場より抑えられていれば、その分を貯蓄に回しやすくなるのは自然なことです。

一方、残差がプラス側で突出しているのが京都府です。予測値より1,525円も家賃が高く、この差は2位の東京都(プラス1,110円)よりもさらに大きく、47都道府県の中で唯一「所得・密度という2つの物差しだけでは説明がつかない」水準にあります。京都府の所得や人口密度そのものは全国トップクラスというわけではなく、それにもかかわらず家賃だけが突出して高いというのが今回の分析で見えてきた事実です。背景として考えられるのは、観光需要や大学・学生の多さによる住宅需要、歴史的景観保護に伴う建築規制などですが、これらはあくまで一般的に指摘される要因であり、今回の2指標だけの分析ではその真偽までは判断できません。

この分析にはいくつか注意点があります。まず、n=47という少ないサンプル数に対して説明変数が2つという構成なので、統計的な頑健性には限界があります。また、相関係数の記事でも繰り返し書いてきた通り、残差が大きいことは「所得・密度以外の要因が働いている」ことを示すだけで、その要因が何かまでは特定できません。京都府の例で言えば、「観光需要が家賃を押し上げている」という説明はもっともらしい仮説ではありますが、今回のデータだけでそれを証明したわけではない、という点は正直にお伝えしておきます。

自分の県がこの予測式からどれくらい外れているか気になった方は、家賃ランキングと県民所得ランキングを見比べてみてください。単独の順位だけでは分からない「割安・割高」の感覚を、数字で確かめられるはずです。

県民所得 × 家賃(1ヶ月・1坪あたり)(都道府県別散布図)

相関係数 r = 0.638中程度の相関、n=47)。点1つが1つの都道府県を表しています。 多くの県はこの散布図上でおおむね右肩上がりの帯の中に収まりますが、京都府はその帯から明らかに上に外れた位置にあり、愛知県・群馬県は帯の下側(所得の割に家賃が低い側)に位置しています。