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人口密度は、所得とも、犯罪率とも、持ち家比率とも相関する『万能変数』だった

当サイトの人口密度データと、性質の異なる複数の指標との相関係数を計算してみると、いずれも無視できない大きさの相関が見つかります。人口密度と県民所得の相関係数は r = 0.654、人口密度と犯罪発生件数(人口千人あたり)は r = 0.528、人口密度と持ち家比率は r = -0.589 です。所得とはプラス、犯罪率ともプラス、持ち家比率とはマイナス。方向も強さもバラバラなこれらの相関が、すべて「人口密度」という1つの変数を軸に同時に成り立っています。

これは人口密度そのものに、所得を上げたり犯罪を誘発したりする特別な力があるという意味ではありません。むしろ、人口密度は「都市化の進み具合」を測る代理変数(プロキシ)として機能しており、都市化という1つの大きな現象が、複数の社会経済指標に同時に影響を及ぼしている、と理解するほうが実態に近いといえます。都市化が進むと、企業や高賃金の仕事が集積して所得が上がりやすくなる一方、当サイトの犯罪発生件数の記事で触れたように、昼間人口の流入や窃盗犯の増加によって犯罪の認知件数も増えやすくなり、さらに持ち家よりも賃貸住宅を選ぶ世帯が増えて持ち家比率は下がる、という具合です。

重要なのは、これら3つの相関がそれぞれ独立した現象ではなく、根っこでつながっているという点です。試しに、所得と持ち家比率の相関係数だけを直接計算すると r = -0.202、所得と犯罪発生件数は r = 0.347 と、人口密度を介さずに見るとやや弱まります。これは、所得と持ち家比率・所得と犯罪率の関係の一部が、実は「両者がともに人口密度(都市化)と相関している」ことによって、間接的に生まれている可能性を示唆しています。統計学ではこうした構造を考える際、単純な2変数の相関だけでなく、他の変数の影響を取り除いた「偏相関」という考え方も使われますが、47都道府県という限られたサンプルでは、そこまで精緻な統制は難しいのが実情です。

また、n=47という都道府県単位の相関は、個人単位のデータで見た場合の関係と必ずしも一致しない点にも注意が必要です。「人口密度が高い都道府県ほど平均所得が高い」という集団レベルの相関から、「人口密度が高い地域に住む個人ほど所得が高い」と短絡的に結論づけることはできません。これは統計学で「生態学的誤謬(ecological fallacy)」と呼ばれる典型的な推論の落とし穴で、都道府県単位の集計データを扱う際には常に意識しておく必要があります。

人口密度という1つの指標が複数の社会経済指標と同時に相関するという事実は、裏を返せば、都道府県データを分析する際に「人口密度(=都市化の度合い)」を意識せずに2つの指標の関係を語ると、見かけ上の関係に振り回されやすいということでもあります。当サイトの様々なランキングを見比べる際は、両方の指標が人口密度と相関していないかを一度疑ってみると、より正確な理解に近づけます。

人口密度 × 県民所得(都道府県別散布図)

相関係数 r = 0.652中程度の相関、n=47)。点1つが1つの都道府県を表しています。 右上に東京都・大阪府が突出しており、この2県が相関を強く引っ張っています。