1千世帯あたりの自動車所有数量と、人口10万人あたりの交通事故死者数の相関係数を計算すると、r = 0.610 という、中程度から強めの正の相関が確認できます。車を多く持つ県ほど、人口あたりの交通事故死者数も多い、という関係がデータの上でもはっきり表れています。
この結果だけを見ると「車の所有率が高い地域ほど運転マナーが悪い」という解釈をしたくなりますが、それは早計です。より単純な説明は、車の絶対数(走行機会)が多ければ、それだけ事故に遭遇する機会も増える、というものです。当サイトの記事でも紹介したとおり、車の所有率が高い地方の県は、公共交通機関が乏しく、日常の移動のほとんどを自動車に頼らざるを得ません。移動距離・移動時間・運転頻度のすべてが都市部より長くなりやすく、単純に「車に乗っている時間」が長いことが、事故に遭う確率を押し上げていると考えられます。
加えて、地方特有の道路事情も影響します。地方は幹線道路の制限速度が都市部より高く設定されていることが多く、住宅街を抜ける生活道路でも交通量の割にスピードが出やすい構造になっています。都市部は渋滞や信号の多さで自然と速度が抑えられる一方、地方は信号の少ない直線道路が多く、万一の事故の際に速度が高いために重大事故・死亡事故につながりやすいという指摘もあります。つまり「事故の件数」ではなく「事故が重大化しやすいかどうか」という質の違いが、死者数のランキングに表れている可能性があります。
実際、当サイトの犯罪発生件数の記事でも触れたとおり、都市部は昼間人口の多さや交通量の多さから、事故や犯罪の「発生件数」自体は多くなる傾向があります。しかし死者数で見ると東京都・神奈川県・大阪府が軒並み下位になっているのは、事故そのものの発生確率よりも、1件あたりの事故が死亡につながる確率(速度・救急搬送までの時間など)が、地方と都市部で異なることを示唆しています。
この相関係数0.610という数字は、「車を持つことが危険」という単純な話ではなく、地域の交通インフラ・道路構造・生活様式が複雑に絡み合った結果です。当サイトの自動車所有率ダッシュボードとあわせて見ることで、単なる事故の多寡ではなく、その地域の交通環境そのものの違いを読み取ることができます。